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風光る京都~傷跡~ 第十話 桜の時

あなたに落書いた嘘の言葉が肌色によく光る

「嫌い」
 



 総司はセイと初めて出会った時の事を思い出していた。

それはもう十年も前の事。奉公先の近藤に連れられて市ヶ谷八幡にお参りに行ったとき、近藤と逸れて泣いていた自分を励ました、お人形のように綺麗な幼い少女。自分だって迷子だったのに、凛として前を見据えた少女を総司は忘れる事が出来なかった。今思えばそれが宗次郎の初恋だったのだろう。置屋で初めてセイを見かけた時は息が止まるかと思った。それから総司は彼女の元に通い続けたのだった。

(あ~あ、もう行くまいと決めていたのだから、斎藤さんを止める権利なんて私にはありはしないのに、何であんなこと言っちゃったんでしょうか?斉藤さんが運命だなんて言うから…。)

気がつけば桜の花びらがちらほらと舞って、総司の掌に一つ収まった。

「皮肉ですかねぇ。」

彼女と初めて会ったのもこんな桜の時。桜吹雪は総司の心をざわつかせた。あんな酷い言葉を吐いて彼女を泣かせたのに。彼女を危険から遠ざける為に吐いた台詞だ。それで嫌われたって自分さえ我慢すれば済む事だ。冷たい仕打ちをしたのなら、それを突き通さなければ意味がない。またのこのこ会いに行ったりしたら、それこそ彼女の傷つき損だ。…だけど。

「あ~もう!」

総司の頭は許容範囲を超えた思考に今にもパンク寸前だ。

「ほんとにこれこそ鬼の所業ですよね。」

と自分に言い訳をして走り出した。また彼女が危険に晒されるかもしれないというのに、会いたいと思う心。恋する鬼は悩み多き年頃…というには、少~し上だった。そしてずっと斉藤が居た事を鬼はすっかり忘れていた。

「沖田さん、独り言…でかすぎる…。」

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