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春、爛漫。
京都は一面桜の天井で覆われ、街は花見客で賑わいを見せていた。ピンク色の花びらがひらひらと舞い、おおよそ似つかわしくないこの男の刀柄にも留まり、それがこの男に珍しく笑みを零させる。 「花見か…。」 その男の名は斎藤一。 刀を研ぎに街に刳り出していた彼は、その京都の賑わいを横目に一人屯所への道を歩いていた。 『花は桜木 人は武士』 斎藤もこの花を嫌いではない。散り際の潔さはこの花の様でありたいと思う。そんな花を肴に花見酒と行きたい所だが、どうもこの騒々しさは苦手であった。呑むなら静かに呑みたい。 あの子と呑む以外はな…。 ふと、脳裏に可愛らしい笑顔が浮かぶ。ああ、あの子と花見に来れたらさぞ楽しいだろう。そんな斎藤が思いを馳せる相手は勿論、神谷清三郎。自分を兄と慕う女子のように可愛らしい武士。そんな事を考えていると、ふと色とりどりの和菓子を並べる店が斎藤の目に付いた。 そうだ、土産を買っていってやろうか? 斎藤自身は生粋の辛党で、甘味は一切苦手であったが、清三郎に何か買っていってやろうと思いついた。清三郎の喜ぶ顔が目に浮かぶ。そうして、甘ったるい匂いに少し鼻を歪めながらも店先の売り娘に声をかける。 「その柏餅を貰おうか。」 「へえ、それ桜餅やけど…?」 ………!何ィ!?ちょっと淡いピンク色なだけでどっちもあんこは入っているし、葉っぱに包まれているし、敢えて分け隔てて言う程の違いがどこにあるんじゃー!!!!! …以上、斎藤心のツッコミ。 「柏餅はこちらどすけど…。」 「………いい、それをくれ。」 「ほんまにいんどすか?これ柏餅やのうて桜餅やけど…。」 「…いいといったらいい。」 斎藤は乱れた心をどうにか落ち着かせ、平常心を装う。甘味をほぼ口にした事のない斎藤には、柏餅か桜餅かなどという些細(?)な違いにはまるで興味がなかった。甘味王の総司に言わせれば全く持って言語道断であろうが。ただ、この間違えてしまったという赤っ恥な状況から一刻も早く話を反らせたかった。 「そのみたらし団子も貰おうか。」 …これなら、斎藤でも食える。清三郎が自分ばかりに土産を買ってきてと気兼ねしないようにとの斎藤の気遣いだ。あわよくばそれを二人で頬張りながら花見でもできれば…と少しの下心もあり。 「へえ、焼き団子どすか?」 「いや、そのみたらし団子…。」 「せやから焼き団子でっしゃろ?」 「………。」 よく見れば、そのみたらし団子には確かに『焼き団子』と札書きがついている。………しかし、みたらし団子は間違ってないだろう!!!!!敢えてそれをここまで強烈に否定する理由がどこにあるー!!!???…以上斎藤二度目の心のツッコミ。 「……その焼き団子を貰おうか。」 「へえ、毎度♪」 心中突っ込みながらも斎藤は折れた…。妙な敗北感が斎藤を襲う。 このマニュアル娘がー!!!!!!!(怒) …お終い。 PR COMMENTS
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