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風光る京都~傷跡~ 第十五話 …なんてね(笑)
「おい!総司、どこ行ってやがったんだ!!!フラフラほっつき歩ってんじゃねえ!!!」

「ひどいなぁ…土方さんったら……。」

と言いつつ総司の顔はへらへらと笑っていた。一見いつも通りの様だが、弟分の張り付いた笑顔の能面にこの勘のいい兄分が誤魔化される訳もなく…

「ん…?どうした?妓にでも振られたか?」

総司の能面が一瞬固まる。その笑顔を崩す事はなかったけれども。しかし流石の土方、いきなり図星を突いて来た。総司は笑顔の下でセイが身請けされてしまった事を土方に話そうかどうしようか迷った。先日会わせたばかりなのに早々にこんなことになってしまって、本当に土方の忠告通りになってしまい何をどう話していいのかわからなかった。それ見た事かと罵られるだろう。総司は困った様にいつもの愛想笑いをするしかなかった。

「…ふん。まあいい。それより仕事だ!」

「……………はい。」

(ちっともよくないんですけどね…。)

しかし仕事に私情を挿む事は局中法度はおろか、総司自身もそれを由とはしなかった。総司は自分の感情を斬り捨てた。




 すでに近藤、山南と始とする幹部連中は局長室に揃っていた。総司は何事もなかった様にすっと列に習って座った。

「よし、これで揃ったな。例の長州浪人どもの会合場所が判明した。囮を使って奴らを誘き出し一網打尽にする!決行は暮六つ!左之の十番隊は気取られる事無くいつも通り巡察に向かうべし。一番隊、二番隊、三番隊は食事を済ませ夜まで待機。いつでも出られる様にしておけよ!久々の大捕り物だ!」

土方の指示に、おう!と皆の雄叫びが上がる。





「大丈夫か?沖田さん。」

同室で鎖を着込む総司に斎藤の声が掛かる。

「何がです?」

「いや、いい。」

斎藤も総司の様子が少しおかしい事に気づき何か言葉を掛けてやるつもりだったが、相変わらず笑みさえ浮かべている総司にもはや何を言っても届くまいと悟った。総司の瞳は斎藤はおろか、何も映してはいなかったからだ。光さえなかった。

斎藤の胸がちくりと痛んだ。

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