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セイは自分の膝を枕にして眠る愛しい男の髪を撫でた。その細い指先が骨ばった大きな手にはしっと掴まれた。
「先生、起きてらしたんですか…?」 「すみません…その…○回も…。」(○には好きな数字を入れよう!(笑)) …情事の後で色気もヘッタクレもない言葉。セイが呆れて言葉を返す。 「相当溜まってらしたんですねぇ。」 「あ、そーいう事言いますか?私がここに至るまでにどれだけ苦悩した事か…。」 「わあ、先生もそんな事考えていらしたんですね!知りませんでした!てっきり私よりお饅頭が恋人なのかと…。」 「そりゃお饅頭も好きですけど…十年来の恋を実らせるのに、この繊細な男心がわからないかな…もう。」 「え?何ですか?」 「いいえ、何でもありません!そうですね~、この太腿もお饅頭もみたいでおいしそうですよね!」 とセイの白い太腿を撫で上げて間髪ド突かれる。所詮今まで散々ド突き漫才を繰り広げていた二人には、 いざコトに及んだからといって、途端に艶っぽい関係には為りきれる筈もなく、こんなピロートークがお似合いであった。 総司が突然、そうだ!と思いついた様に口を開く。 「そーいえば、聞いてないんですけどね…。」 「何をです…?」 セイは首を傾げた。 「その…貴女から…あ、愛の言葉…。」 「…はあ!?」 「…だって~、私は今日散々言いましたよ。だのに貴女は『嫌い』の一点張りで…(泣)。今はそうじゃないって解っているつもりなんですけど、やっぱり聞きたいじゃないですかぁ。」 (ほほう、この野暮天からこんな言葉を聞く日が来ようとは…。) とセイは妙な感心をした。あの野暮に泣かされた苦悩の日々がセイの心に走馬灯の様に駆け巡り、 懐かしさすら覚えて遠い目になった。明後日の方角を向いてうっとりと目を細めているセイに対して 「ねえ、太夫ってば!」 総司が痺れを切らした様に拗ねた口調で強請る。強請られて言うのも何だか恥ずかしいが、こんな事に意外と頑張る総司に観念してセイはそっと彼の耳をくすぐる様に小さく呟いた。 「…お慕いしております…」 「え?よく聞こえなかったですよ。太夫もう一度…。」 「もう二度は言いません!女子に恥をかかせないで下さい!」 「えええ、そんな~っ。」 何だか納得出来ない総司だったが、セイと通じた幸せを噛み締めて、今度こそセイの膝の上で眠りについた…。 総司の寝顔を見つめていたら、ふと彼の髪を撫でる手が落ちてくる雫に濡れる。セイの瞳から大粒の涙が溢れていた。 (先生、ごめんなさい…ごめんなさい…ごめん、なさ…。) セイは精一杯声を殺して泣いた。 …総司は気付かない。 COMMENTS
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