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物凄い形相の総司がセイに詰め寄る。 「どーして黙ってたんですか!?」 「すみません…。」 総司に怒鳴られてしゅんとするセイに思わぬ助け舟が出た。 「言えばお前、賛成したか?こいつを危ねえ目に合わせたくねえとかうだうだ言ってやがったからな。こいつは俺が買わなきゃ他の奴に身請けされちまうトコだったんだよ!」 詰め寄る総司に対し、土方の背にセイが隠れる形になった。それが益々総司の癪に障る。 「う…、その構図、止めて下さい。まるで私が悪者みたいじゃないですかぁ。 太夫、そーだったんですか…?」 土方の背中越しのセイに疑問に加えて嫉妬心も絡まり、総司は尚も詰め寄る。 「…もう太夫じゃありません。」 「話、逸らさないで下さい。本当に…?」 「…はい。副長が身請けして下さらなければ私は大店に落籍されるお話がありました。だから私は副長のお話をお受けしたんです…てゆーか、正確には先に勝手に新選組に請け出されちゃってて、私には事後報告だったんですけど…。」 セイは恐る恐る土方の背から出てきた。そして総司は漸く全てを理解した。自分は土方らにグルになって騙されたと…。それで自分がどれほど落ち込んだかという事をいっそセイにぶつけてやりたかったが、それよりも… 「もう、なんて馬鹿なひとなんでしょう…!」 愛しくて、嬉しくて、一目を憚らず総司はセイを力いっぱい抱きしめた。セイがどこも怪我をしていないかを確かめる様に弄りながら。 「先生には…言われたく、ありま…せ…。」 セイも総司の背中に手を回す。言葉は涙で途切れた。…そこへ水を挿す低い声。 「お愉しみのところ悪ぃがな。こいつの身請け金は手前の給料から天引くからな、総司。完済するまでは全部が手前のもんって訳じゃねえんだから、そこんとこよ~く肝に銘じて…って言ってる傍からイチャつくんじゃねぇー!」 「…土方さん、ご尽力誠に有難う御座います。でもさっきからごちゃごちゃ煩いですよ。馬に蹴られる前にどっか行っちゃってくれません?」 カッティーン! 「あー、そうかよ!言っとくがな、新選組名義で身請けした以上、まだ俺(ら)のもんでもあんだかんな!時々摘ませて貰うかもな!はん!」 と土方は捨て台詞を吐いてその場を去っていった。総司の腕の中でセイはドキリとして土方の強引な口付けを思い出し、顔が熱くなるのを感じた。 (やだ、私ったら…。) 総司は漸く去った土方の背を見送りながら唇を尖らす。 「全くもう、何て事言い出すんでしょう、あの人は…って太夫、じゃあなくて…えーと、おセイ、ちゃん…?真っ赤ですよ。どうかしたんですか?まさか、土方さんにもう何かされちゃったんじゃ…。」 セイは総司に皆までは言わせず、総司の襟首を思いっきり引っ張って、精一杯背伸びをして、総司の口元を自分のそれで塞ぎ、言の葉の先を奪う。ちょっと驚いた総司だったが喜んで彼女に応えた。 そうあたし思い切って ………………な訳ではなく。新選組の屯所の台所に立っていた。 PR COMMENTS
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