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「沖田先生、女の方が屯所の前でお待ちです。」
そう平隊士に告げられ、 「え…?」 と稽古を終えた総司が答えている背後から、物凄い足音が聞こえてきた。 「「「総司の馴染みが来たって~!!!」」」 例の三人組だった。我先にと怒涛の如く駆けていく三人に総司は脇から足をことごとく引っ掛けた。大の男が面白い様に転がって行く。そして総司は足早に玄関に向かった。 「沖田先生!」 それは紛れもなくセイだった。 「た、た、太夫!ほんとに貴女だったなんて…。」 「すみませんね!私で!って他にも沖田先生を訪ねてくる女子がいらっしゃるんですか!?」 「……いる訳ないでしょう?もう、何だってハナっからそんな喧嘩腰なんです…?」 「どーだか。」 総司は大きく溜息をつく。拗ねるセイを可愛いとは思うけど如何せんここは屯所だ。物凄い数になっているギャラリーの刺さるような視線がちくちくと背中に痛い。 「しかし何て無茶をするんです!?新選組の屯所に太夫が一人でお忍びで来るだなんて!あああ、ここのところ忙しくて十日ほど顔を見せなかったんで寂しくなっちゃったんですか?」 と総司はマジなんだか冗談なんだかわからない事を言っていた。これでもかなり動揺しているらしい。 (あ~もう!道中は勿論ですが、こんな男所帯に来たりして、危ないじゃないですか~!全く野暮天女王なんだから~!) とセイが聞いたら『アンタにだけは言われたくない!』と突っ込まれそうな独白。しかし総司は、背後の連中の荒い鼻息まで聞こえてきて気が気じゃない。ところがそんな総司とは対照的に、セイの表情は凛として厳しかった。 「…大事なお話があるんです。」 「へ?貴女がこんな所にまで来るほどの大事な話って…?でもここでは何ですから、場所を移しましょうか。」 なにやら後ろから野次やら口笛が聞こえてくるが、総司は無視してずんずんと歩き出した。手を引かれているセイからは見えなかったが、総司は耳まで真っ赤に染まっていた。 「あれが総司の馴染みの太夫…。」 「ねっね、マジ可愛いっしょ!」 「あああ、羨ましいぜチクショー!俺も一途になろうかなぁ…。」 「……あれが沖田さんの馴染みか。」 「「「うわあっ!ビックリした~っっ!斎藤いつの間に!?」」」 「…さっきからずっといるが?」 と三人の組長の会話にもう一人の組長がこっそり紛れ込んできた。斎藤一、三番隊組長である。 「…あの娘、どこかで…。」 「何ィっ!?斎藤、彼女を知ってんのかよ!?」 「………。いや、確証はない。他人の空似かも知れん。」 「どこかで会った気がする…なんざ、陳腐な口説き文句じゃねえか!いけねえな、横恋慕は!」 「いや、そんなつもりは…。」 「ううん、いいんだよ斎藤さん。わかるよ、その気持ち!あんな可愛い子だったら、俺だって惚れちゃうもんね!総司ばっかりズルイよね~。」 「いや、だから…。」 「そうかそうか、振られちまって可愛そうなヤツだなお前って…呑もう斎藤!俺たちが慰めてやる!」 「……………。」 本当はもっとセイの姿を見送って、記憶の断片を辿りたかったが、なんだか明後日の方向に話が進み、左之と新八に両脇を固められ、うやむやのうちにその場を退散させられる斎藤であった。 「…確かに可愛いが…。」 「ん?何だ斎藤?何か言ったか?」 「いや。」 斎藤の頬が少し染まったのを誰も知る由はなかった…。 PR COMMENTS
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