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その頃、セイはとある座敷に呼ばれていた。ところが呼ばれて座敷に上がって間もなく、『女、席を外せ』等とお決まりの文句を言われて別室で待ちぼうけを食っていた。
(何なのよ!身なりは立派だけど、なんて柄の悪い連中!秘密の会合すんなら妓遊びなんかすんなっつーの!) セイは心中毒付いた。 「太夫、姐さん方、またお客はんがお呼びでっせ。」 やれやれ、やっとか…とうんざりしながら元いた座敷に向かったセイだったが、障子を開けた途端にセイは豹変する。 「もう、旦那方ったら、焦らさないで下さいな。」 とにっこりと極上の笑みを浮かべた。太夫の美しさにその場にいた男共から感嘆の溜息が漏れた。セイはプロだ。まるで総司の相手をしている時とは天と地の差だった…。 「あああ、すまなかったな太夫…!さあ、こっちへ来て酌をしてくれ!」 「へえ、私なんかで宜しいんで?」 と言いつつ、心中真っ赤な舌を出すセイだった。 (早く終わんないかなぁ。) 笑顔の下でセイが心中ぼやく。だいぶ連中の酔いが回った頃、酒の力で勢り立った男の一人が 「土方め…目にもの言わせてくれようぞ…!」 と呟いた。え…?とセイは表情を崩さず耳を欹てた。 「おい、口を慎め。油断は禁物だぞ。」 とリーダー格と思われるセイの隣の男に嗜められた。 (土方って…確か沖田先生の話によく出てくる新選組の副長よね…?ってことはこの連中は長人?) 「ま、今宵は存分に存分に楽しもうぞ。前祝いだ!」 (前祝い…何の?) セイは尚も表情を崩さず、お酌をしながら思考を巡らせた。何だか悪い予感がする。どうやらこの連中、何かの計画を立てているらしい。その標的が土方…すなわち新選組だとしたら…?総司も当然危険に晒されるに違いない。全身の血の気が引いた。 (私…なんて奴らにお酌をしてるの!) セイは隣の男の顔を見て虫唾が走る。そして自分が心底情けなかった。太夫などと呼ばれても所詮は女郎、そして非力な女子。好いた男の敵と思われる輩を目の前にして、何も出来ない自分が歯痒かった。全くの清い仲で、ちっとも恋人なんて呼べる立場じゃないけれど…。 (でも…。沖田先生の危険を知っていて、何もしないなんて事出来ない!あの人を護りたい!) ふとセイは何かを思い立って、酌をする手を更に早め、隣の男に自分の身体を摺り寄せた。男の喉が鳴る。そして少し瞳を潤ませながら、可愛らしい唇をそっと耳元に寄せて何かを呟いた。 PR COMMENTS
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