忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Category()  
続・無題
「斎藤さん急いで下さいよぅ!」

「何故…。」

大阪より京都への道を上る二人の男。
新選組の一番隊組長沖田総司と三番隊組長斎藤一である。
二人はこの組合せでは珍しく仲良く(!?)
大阪出張へ出向いた帰りの道中である。

「だって一月ぶりの京都ですよぅ~!!
私もう栞ちゃんに会いたくて会いたくて…!!!!!」

「………。(カミさんじゃないのか…!?(怒))」

総司の物言いに顔つきは変らないが、
斎藤の眉間には怒りの四つ角が幾重にも脈打つ。
もちろん総司のカミさんとはセイのこと、
そして栞とは昨年生まれた総司の長女のことである。
斎藤がセイを密かに好いていた事は過去の事としても
やはりこの男のこんな話は斎藤にとっては面白くない。

「栞ちゃんったら昔の神谷さんにそっくりなんですよぅ!
もう可愛くって、可愛くって…!!!」

「………あんたに似なくて良かったな。
(そりゃ神谷に似ていれば可愛いだろう…!)」

斎藤がうんざりと答える。
それを聞いてか聞かずか総司は尚も続ける。

「ああ、それなのに最近忙しくてあまり家に
帰れなかった上に、大阪へ一月も出張行けだなんて、
全く土方さんったら意地悪過ぎますよ~。」

「………。」

「出張前にね、颯介と栞に『高い高い』をやってあげたら
二人ともとーっても喜んでくれたんですよぅ~vvv
あああ、帰ったらまたやってあげよう…!!!」

「………。」

総司莫迦親っぷり全開。
だんだん斎藤はいちいち返事をする気も起こらず、
もはや総司のでかい独り言になっていた。





「そうだ!斎藤さん屯所に着いて報告終わったら
うちに来ません?」

総司が斎藤を自宅へと誘った。

「…一月振りの家族水入らずにそれはないだろう…?」

それは流石に…と斎藤は遠慮しようとしたが

「遠慮しないで下さいよぅ!
セ…神谷さんも斎藤さんに会いたがってますし、
うちの颯介は斎藤さんが大好きですからね!
颯介は私と男の趣味が合うんですよね~。あははは。」

と総司は笑った。男の趣味って…。
颯介とは総司に瓜二つの分身の長男、第一子だ。

「何より、栞ちゃんが超、超、超可愛いんですよ~!!!」

総司は両拳をぶんぶんと振りながら嬉々として叫ぶ。
…結局それだった。

(超はやめろ…。)

総司の年甲斐のない物言いに斎藤は心中ツッコむ。
かく言う斎藤も確かに人妻になったとはいえ、
久方ぶりにセイの顔が見たかったので

「…いいのか?」

と些か遠慮がちにいうと

「ええ♪夜までにお引取り下されば♪」

と総司は満面の笑顔で止めをさした。





 一方、此方は総司の自宅。

「ふんふんふん~♪」

台所から良い匂いと共に軽快な鼻歌が聞こえる。

「うわ~、おいしそぅ~。」

目をキラキラと輝かせた颯介がこっそりと土間に降り立つ。
そして台所に並ぶ料理をそ~っと摘もうとすると

「め!」

とセイに菜箸で手の甲を叩かれる。

「颯ちゃん、栞を見ててって言ったでしょう!?
父上が帰ってきたら一緒に食べるんですから
摘み食いはいけません!
もう、そーいうトコほんっと沖田先生そっくりなんだから!」

セイが息子を嗜めるが

「でも母上ぇ…いつもよりとってもとっても一杯で豪華ですぅ。
お正月でもこんなご馳走見たことないですぅ。」

との颯介の以外と鋭いツッコミに

「あ、あらそう!?ちょっと作り過ぎちゃったかなぁ…?」

とちょっと図星を突かれて冷や汗を流すセイだった。
総司が一月ぶりに帰ってくる。
セイは目茶目茶張り切っていた。





「ただいま帰りましたよ~。」

総司が玄関の戸をガラガラと開けて入っていくと

「お帰りなさいませ、旦那様!」

セイはもう玄関先に座して待ち構えていた。

「斎藤さんも連れてきちゃいました。」

「…すまんな。おセイさん。」

斎藤が申し訳なさそうに頭を下げるが

「あ、兄上!お久しぶりです!清三郎でいいですよぅ!(笑)
ようこそいらっしゃいました!
ぜひお夕飯食べていって下さいね。」

セイは嫌な顔一つせず、むしろ久方ぶりの斎藤との再会に
華の様な笑顔で答える。

(やはり、かわいい…。)

人妻に拙いと思いながら斎藤の胸がドッキュンと高鳴る。
セイの女子姿は男装している時から何度も夢に見るほど
想像していた、ちょっと危ない斎藤であったが
本物は想像以上の美しさであった。そこへ、

「父上、お帰りなさいませ!
うわーい!斎藤さんこんにちはー!!」

セイに暫し見とれていた斎藤に颯介が飛びついた。
颯介は本当に斎藤によく懐いていた。
総司に気持ち悪いほど瓜二つなのはちと気になるが
セイの子だと思えば可愛くない筈はなかった。

「…セイ、栞…栞は!?」

キョロキョロと総司が辺りを見回す。
セイもハッとして自分の背に振り返る。

「え、あ、栞…?」

栞はセイの着物を掴んで後ろに隠れてジっと総司を見ていた。

「あ、栞ちゃんvvv会いたかったですよぅ!…って栞ちゃん?」

栞を見つけて総司は笑顔全開で手を広げるが
栞は一向にセイの後ろから出てこようとはしなかった。

「どうしたの?栞?お父上ですよ?」

セイも栞に声を掛けるが、まるで知らない人を見るかの様に
栞は総司を警戒して、近づこうとはしなかった。
暫しの沈黙が流れる。


……………。


その沈黙を破ったのはハタから見ていた斎藤である。

「…もしやご息女はあんたを忘れているんじゃないか?
あまりに家に帰らなかったからな…。」

斎藤の冷たいツッコミに

「そ、そんなぁ~!!(泣)」

総司はショックのあまり絶叫した。





 総司はかなりいじけていた。

「…あんなに『高い高い』してあげて喜んでたのに、
私の事忘れちゃうなんて酷過ぎます…。
私はこれっぽっちも忘れた事なんかないのに…。」

イジイジと畳にのの字を書く。
栞はまだセイの背から出てこない。
総司の『高い高い』という言葉を聞いて、
斎藤の膝の上に座っていた颯介が
思い出した様に総司のところに寄ってきて

「父上ー!『高い高い』して下さい~!」

と強請ってきた。
いじけていた総司もようやく息子には懐かれて
少しだけ機嫌を取り戻し、

「…はいはい、では行きますよ。高い高い~!」

と颯介を天井近くまで持ち上げた。
高く持ち上げられてきゃっきゃと颯介が喜ぶ。
その光景を見た途端、栞の顔つきが変った。

「…栞?」

今までセイの背から一向に出てこなかった栞が
つてつてと総司に近寄っていったのだ。

「…栞ちゃん?」

総司も娘に恐る恐る声を掛ける。
すると栞は近寄って来たかと思うと
くるっと総司に背を向けて両手を広げた。

「こ、これは…!!!」

総司の喉がごくっと鳴る。
まだしゃべれない栞の
『高い高いをしてくれ』ポーズであった…。





「あははははははははははっ!
あ~、お腹痛い~っ!あははははっ!」

「…笑い過ぎですよ、セイ…。」

「…つまりあんたは自分の娘に
『高い高いをしてくれるおじちゃん』としか
認識されていなかったようだな。」

「…冷静に分析しないで下さいよ、斎藤さん…。」

総司が脱力しながらも二人に突っ込みを入れる。
しかし総司が『高い高い』をしてやっと初めて
栞の記憶に蘇ったのは確かのようである。
全く忘れられていた訳ではなかった様だが、
総司の心境は複雑だった。
散々『高い高い』をしてもらって遊び疲れた栞は
漸く警戒を解いて総司の膝の上で眠っていた。

「…栞にはまだ先生のお仕事が理解できないだけ
なんですから許してあげて下さいね。」

セイが優しく総司を慰める。
自分の父親に対するほどではなかったが
セイには栞の気持ちが少し解る。
自分は父の仕事を、その高い志を理解できずに
17年も過ごしてしまった。
それが今は少し悔やまれるけど…。
だが家にあまりいない総司を忘れてしまっていた栞を
とても責める事は出来ない。
彼女もいつか父の仕事を理解する時が来るだろう。

「解ってます…。寂しい思いをさせてしまってますから…。」

総司が愛しいわが子の髪を撫でながら言った。





 斎藤も屯所へ戻り、二人の子供も寝静まった頃…。

「ぷっ…うふふ…っ」

未だ思い出し笑いをするセイがいた。
流石に総司に悪いと思ったがどうにも止まらなかった。

「…まだ笑いますかねぇ…。」

総司がむっとする。

「申し訳ありません、旦那様…。でも…ちょっといい気味。

セイがポツリと呟く。

「は?」

その小さな呟きを総司は聞き逃さなかった。

「それどういう…。」

妻の信じられない言葉に総司が詰め寄ろうとした時、
セイが観念して白状した。

「だって、総司さんったら栞の事ばっかりなんですもの。」

べーっとセイが赤い舌を出す。

「…何だ、妬きもちですか?莫迦ですねぇ…。」

総司がふっと笑ってセイを抱きしめて優しく口を吸う。
二人の夜はこれから。




お終い。

拍手[1回]

PR
Category(風光る)  CM(0)
PREV ENTRYTOPNEXT ENTRY
COMMENTS
COMMENT FORM
NAME
MAIL
HOME
PASS
COMMENTVodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
SEARCH THIS SITE
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新CM
[02/23 …名乗らなくても分かるだろ(笑)2]
[09/10 おたま]
[04/17 …名乗らなくても分かるだろ(笑)]
[12/19 おたま]
[10/24 おたま]
[01/10 NONAME]
[11/26 おたま]
[10/04 637]
[09/22 637]
[09/16 NONAME]
プロフィール
HN:
ダヴィデ=フタビン
性別:
女性
趣味:
漫画描き(一応…)・パン作り
自己紹介:
バーコード
ブログ内検索
カウンター
お天気情報
FX NEWS

-外国為替-
アクセス解析
Templated by TABLE ENOCH